こんにちは。『お金に困らない生活(インデックス投資ブログ)』管理人のそーたろー(@sotarowassyoi)です。
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この記事を書いたそーたろーはこんな人です。
- 2008年から国内・海外ETF、つみたてNISA、iDeCoなどでインデックス投資をしています。
- 2020年より米国株オプション、サラリーマン大家、副業ブログを実験中です。
この記事は次のような人にオススメです
- 米国ETFにおける分配金の二重課税部分を外国税額控除で取り返したい人
- インデックス投資でETFの分配金を確定申告すべきか知りたい人
この記事の目的
米国ETFの分配金は日米で二重課税されるので確定申告して外国税額控除で取り返しましょう、というのが教科書的なアドバイスです。
さてインデックス投資で米国ETFを使う場合、外国税額控除のためだけに時間と労力をかけて確定申告する価値があるでしょうか?
実は米国ETFなどの配当所得についてはいろいろな要素が絡んでかなりビミョーな問題なので、私の個人的な考えを紹介します。
なお内容の正確性については保証できかねますので、あくまでネタとしてお楽しみくださいますようお願いいたします。
インデックス投資における配当所得の基本
配当所得の課税や外国税額控除がかなり複雑で込み入った話なので、最初に基本的なことをまとめておきます。
- 配当所得の対象となるのは? →国内株・ETF、海外株・ETFなどの配当金、分配金など
- なぜ配当所得を確定申告するのか? →納め過ぎた税金を取り返すため。特定口座(源泉徴収あり)ならしなくても脱税にはならない。
- 二重課税とは? →投資先の国と日本で二重に課税されること。米国の配当課税10%が主な話題。
- 外国税額控除とは? →海外投資などの利益で二重課税になった税金の調整措置で確定申告が必要。
- 配当控除とは? →国内株・ETFで発生する配当金・分配金の課税を10%に下げてもらえる制度で、こちらも確定申告が必要。
- インデックス投資で配当所得を確定申告すべきか? →手間がかかるしデメリットもあるので、取り返せる金額とその人の考え方次第
といった感じで、最終結論として「その人次第」になってしまうため、インデックス投資ではどうしたらよいのか、といった情報はネット上にはあまり出ていないのが実情かと思います。
配当所得を確定申告すべきか?
納め過ぎた税金についてはきっちり返してもらう、また納める必要のない税金は納めないのが大原則です。
しかし配当所得の確定申告については、会社員の一般的なインデックス投資という条件に限定すると、私は以下のような理由でそれほど神経質にならなくてもよいと思っています。
このようにインデックス投資の場合、ETFの分配金については時間と労力をかけて確定申告する意義は低い場合も多いと思われます。
また外国税額控除のためだけに確定申告をすると以下のようなデメリットも生じます。
「取れるものはきっちり取る」という考えの人は確定申告するといいですが、会社の年末調整だけで済んでしまう多くの人は、簡潔さを優先して以下のような方針で運用するのが現実的な落とし所ではないか、というのが私の結論です。
インデックス投資とETF分配金の確定申告
無視しても影響は小さいかもしれないけれど、取り返せるならがんばって確定申告したい、ということであれば細々したことを確認していく必要があります。
外国税額控除とは?
まずは今回のメインテーマである外国税額控除とは何なのかですが、外国で納めた税金を取り返すための申請です。
一部の外国では証券取引などの利益に対して源泉課税が生じます。
課税の有無、税率は国によって違うので、今回は米国を例に話を進めます。
米国株・ETFでは配当・分配金に対して10%、残りの部分に日本の配当所得への課税として20.315%が課せられます。
日本国内だけであれば20.315%だけで済むところ、米国10%も徴収される二重課税の不公平が存在しています。
この問題の調整措置として、確定申告すると米国10%の二重課税に対して調整を受けられるのが外国税額控除です。
配当控除とは?
外国税額控除は外国株式・ETFの調整措置ですが、それとは別に国内株式・ETFだけに適用される配当控除があります。
配当所得の課税方法には総合課税と申告分離課税があって、いずれか有利な方を選ぶことができますが、配当控除を申請する場合は総合課税でのみ適用されることになっています。
配当控除を申請すると所得税率は累進課税における各課税所得の税率から10%控除してもらえます。
しかし総合課税にすると住民税の税率が5%から7.2%へと高くなるというデメリットがあるので、この対処として「住民税の申告不要制度」というのを使うと5%に据え置かれるという技を使います。
ところが「住民税の申告不要制度」は令和5年の確定申告くらいまでしか使えない予定となっており、以降は所得税と住民税は課税方法(総合課税、申告分離課税、申告不要)を統一させなければならないそうです。
その結果、将来的には配当控除のために確定申告するメリットが薄れるため、特定口座の申告不要を使う人が増えるのではないかと見られているようです。
といった感じで、配当所得の確定申告は入り口ですでに面倒ですね。
配当所得の確定申告
ETFの分配金は所得の種類としては株式の配当金と同じ配当所得に分類され、先の外国税額控除の説明で触れたように以下のとおり源泉徴収されます。
ETFが上場されている国によって課税が異なり、日本の投資家の場合は米国の源泉課税が二重課税の問題として取り上げられることが多いです。
配当所得の税金は源泉徴収なので税処理としては何もしなくても構いませんが、確定申告すれば一部を取り返せるというのが今回の話の趣旨です。
特定口座(源泉徴収あり)の場合は以下のとおりです。
配当所得の課税方法を簡単にまとめると以下のとおりです。
配当に関する控除を利用するために確定申告した方がお得なのかどうかについては、
このように配当所得は課税システム自体がかなり複雑なので、正確なことが知りたい場合は各個別の状況を調べて検討する必要がある、というのが配当所得の難しいところですね。
ETFの分配金に関する課税処理まとめ
配当所得の確定申告は複雑ですが、普通の会社員が一般的なインデックス投資をメインにしているという条件であれば、以下のように考えればよさそうです。
国内外の配当所得についてまとめると以下のとおりです。
国内ETFなどの配当税率
米国ETFなどの配当税率
配当所得の確定申告で押さえておくポイント
というわけでインデックス投資で米国ETFの分配金を得た場合、外国税額控除を申請する以外にやれることがほぼないというのが私の理解です。
超ビミョーな外国税額控除
さて、こうした難解な配当所得の課税を理解して確定申告をしても、外国税額控除という仕組みが超ビミョーだというお話を紹介します。
外国税額控除の簡単な見積もり方
外国税額控除で取り返せる金額はケース・バイ・ケースなのですが、国税庁の確定申告書等作成コーナーで試算できます。
ある程度正確な数字を知りたければ源泉徴収票と証券会社の年間取引報告書を、ザックリでよければ年収、社会保険料、分配金の合計額、米国源泉徴収の合計額、くらいあれば大体の控除額がわかります。
特に登録なども不要で、インターネット上にある税金用の計算機として使えます。
今は会社の年末調整で済ましているけどいずれ副業したいと考えている人などは、雑所得を得たら確定申告が必要なので勉強がてらやってみたらいいと思います。
外国税額控除では一部しか戻らない
なかなか大変な配当所得の確定申告ですが、外国税額控除を申請しても二重課税で徴収された全部は戻ってきません。
外国税額控除は二重課税部分の還付ではなく、不公平に対する調整措置として所得税から一定の金額を引いてもらえるという制度です。
いくら控除してもらえるのかは納税者の所得や配当・分配金などの大きさで変わるので人それぞれですが、効果が小さい場合も少なくないという印象です。
簡単なシミュレーションで紹介します。
以下のような内訳のポートフォリオを持っていたとします。
保有している米国ETF150万円の分配利回りが1.5%/年とすると、おおよその年額は以下のとおりです。
- 分配金:150万円×1.5%=2.25万円
- 米国の課税:2.25万円×10%=2,250円
- 日本の課税:(2.25万円ー2,250円)×20.315%=4,113円
- 税引き後の分配金:2.25万円ー2,250円ー4,113円=16,137円(71.72%)
上記の数字を使って外国税額控除で取り戻せるお金を試算すると以下のとおり。
私は細かい説明まではできませんが、所得税をたくさん払う人、外国からの収入が多い人ほど控除額が大きくなる仕組みのようです。
このように二重課税で徴収された金額が小さい場合、つまり分配利回りが低く、保有量も少ない場合の影響は限定的と考えてよいかもしれません。
高分配な米国ETFは損か?
では分配金の金額が大きい場合はどうかというと、私の理解では高分配になるほど二重課税の影響は大きくなる傾向があって、取り返せるお金はその人が支払う所得税額が大きく関係すると考えています。
先程と同じ1,000万円の金融資産で、今度はリスク資産は米国ETFだけを保有しているとします。
保有している米国ETFの分配利回りが12%/年とするとおおよその各年額は以下のとおりです。
- 分配金:500万円×12%=60万円
- 米国の課税:60万円×10%=6万円
- 日本の課税:(60万円ー6万円)×20.315%=10.97万円
- 税引き後の分配金:60万円ー6万円ー10.97万円=43.03万円(71.72%)
上記の数字を使って外国税額控除を試算すると以下のとおり。
年収450万円のケースでは米国10%課税6万円に対して控除2.7万円で約3.3万円のロスですから、個人的にこれはないかなぁという感じがします。
先程の分配利回り1.5%と12%の控除率の比較をすると以下のとおりです。
分配利回り | |||
---|---|---|---|
1.50% | 12% | ||
年収 | 450万円 | 34% | 45% |
800万円 | 78% | 89% |
ここからわかることとしては、
したがって米国ETFで高分配作戦を採用する場合は、投資対象よりも自分の所得が足を引っ張る可能性があるということになりそうです。
年収が高い人は税金を多く納めるので控除も大きいというのは理屈としてはわかりますが、低年収(納税額が少ない人)ほど戻ってこないというルールはかなりエグいっすね。。。
外国税額控除の年収別早見表を作ったのでよろしければどうぞ。
ちなみに分配利回りが12%/年なんてあり得ないと思うかもしれませんが、日本の主要ネット証券でデリバティブ系の米国ETFとしてリアルで買うことができますのでご安心(?)ください。
分配金の原資は何も株式の配当だけではないということですね。
なぜ外国税額控除はビミョーなのか?
所得の大きさで控除率が大きく違うのは納税額の違いから生じる差なので、残酷ではありますが仕方ない気もします。
しかし外国税額控除を使っても部分的にしか返ってこないのでやはり二重課税は不公平だと感じます。
一方で国税庁からすれば、国民の経済活動によって国外で課税され、国内で二重課税になるからといって日本国が還付しろというのも筋違いな感じもします。
国外で10%納めたからといって、日本国が10%を放棄して10.315%しか取れなければ取りっぱぐれてしまいます。
私は税務については素人なので本来どうあるべきかはわかりませんが、そもそも国内居住者で海外からの収入がある人の絶対数が少なく、また論点もビミョーであるが故に慰め程度の外国税額控除が用意されているのかなと思いました。
何もないよりいいでしょ、的な。
ただ最近は海外に投資する国内ETFはファンド側で二重課税対応されるようになっています。
そうすると国内ETFは二重課税が解消されているのに、海外ETFは外国税額控除で一部しか返ってこないし、人によって金額も違うのでこれはこれで不公平ですよね。
米国株投資の盛り上がりもここ数年といった感じで、個人投資家による海外投資環境もまだまだ過渡期なのかもしれません。
そういった意味では米国ETFの保有量、分配率、自身の所得税額から二重課税と外国税額控除がどの程度の影響を及ぼすかを把握しておくのがよさそうです。
その上で投資家サイドとしては手間と実利を天秤に掛けて、負担にならない範囲で対応すればいいと思います。
会社員のインデックス投資の場合なら、収入が複数あるとか、医療控除や住宅ローン控除などを利用するなどで確定申告が必要で、かつ外国税額控除で取り戻せる場合は利用すればよいのではないでしょうか。
ただ医療控除や住宅ローン控除などを受けて納める所得税が減ると、外国税額控除で取り戻せるお金も減るというのがこれまたビミョーですけどね。
なお外国税額控除で所得税から控除しきれなかった残りの部分は復興特別所得税や地方税からも控除でき、それでも余れば3年間の繰越ができます。
しかし毎年一定の分配金が発生してその額が増えていくような状況では、取り返せずに終了していくのでこの点もやっぱりビミョーです。
海外ETFについては国内ETFのようにファンド側で二重課税を調整してもらうのは無理だと思うので、外国株式についても配当控除を適用してくれれば落とし所としては結構スッキリするのにね、と思っています。
日本のインデックス投資にとって外国税額控除は超ウルトラ・ビミョーです。
実際の運用について
放置したらどの程度の影響があるか?
二重課税の影響を見るために分配金を出さない投資信託と海外ETFで外国税額控除をしなかった場合との比較で考えてみます。
ETFは投資信託より年率コストが低いことが特徴ですが、米国ETFの方は分配金に対して10%余計に課税が発生するということで、それだけ運用コストの負担が大きいと考えることができるでしょう。
先ほどの試算では分配利回り1.5%の10%が二重課税部分なので、0.15%が余分なコストと考えることができます。
投信とETFではファンドの年率コストの差もありますが、現在はかなり縮まっているので無視します。
この考え方を実際の米国ETFに当てはめて考えてみたのが以下です。
せっかくの低コストETFも台無しって感じですかね。
続いて毎月5万円、20年のつみたて投資で期待リターンが0.13%違う場合のシミュレーションは以下のとおり。
投資資金を全額米国ETFへ投資して外国税額控除をしなかった場合というかなり極端な例ですが、20年で31万円の差を誤差の範囲と見るか、低コストにこだわるべきと見るべきか。
なおこれは分配利回り1.30%の例であって、分配利回りが高くなるほど影響は大きくなる点に注意が必要ですね。
米国ETFを使う意味があるか?
米国ETFを使うかどうかは好みの問題かもしれません。
米国ETFは分配金が二重課税で損だから国内投信の方が絶対に優れている、ということにはならないのがまたビミョーなところです。
投資信託とETFは一長一短な部分があって、どこか一部分だけを見てどちらが優れているとは言い切れない側面があります。
分配金の二重課税の部分だけをみると米国ETFは不利なように感じるかもしれませんが、私は以下のような理由で米国ETFを積極的に使っています。
グローバル・ブランドの信頼感があるから
私が考える大きなポイントとして、米国ETFにはグローバル・ブランドの信頼があります。
ブラックロック、バンガードの海外ETFは世界的な知名度を誇りますが、一方の国内ブランドの投信などは非常に頼りないと見ています。
先日、私は外資の日本法人のファンドの繰上償還を食らいましたが、ファンドの信頼性、持続可能性、安定性は長期投資にとって大きな意味があります。
ブラックロック、バンガードのETFが絶対に繰り上げ償還しないという保証はもちろんありませんが、薄利多売型の商売では規模の大きさが重要なので国内投信よりは信頼性が高いと考えています。
国内の運用会社のビジネスに疑問を持っているから
最近は日本の運用会社が低コストファンドをリリースして投資家としてはインデックス投資がやりやすくなっています。
しかし彼らは営利企業であって慈善事業ではないので、低コストファンドでは運用費という収益が減っています。
彼らのビジネスの実態がどうなのか知りませんが、日本の投資信託を見渡すと高コスト(ボッタクリ)ファンドで溢れています。
こうしたファンドをだまされて買わされているのはお金をたくさん持っている中高年で、売っているのは金融機関の窓口です。
つまり低コストファンドでビジネスが成り立っているのは、訳がわかっていないお年寄りたちが日本の運用会社と金融機関を儲けさせているから、という図式が見えないでしょうか。
世界中どこの運用会社であっても市場競争で勝っていかないと生き残れないのは同じですが、バンガードなどは低コストなファンドにコミットすることを企業価値として掲げている点で、国内の運用会社にはない信頼があると思っています。
数年前にバンガードは日本から撤退しましたが、日本の個人投資家をめぐるこうした環境でバンガードが低コストファンドで勝負するのはかなり難しかったのかもしれません。
一般NISAなら分配金は国内非課税だから
私はETFで分配金をキャッシュで取り出すことについても一定の価値があると考えています。
投資成果だけに着目すると分配金を出さない再投資型の投資信託が優れていますが、リターンをキャピタルに振らずにキャッシュで取り出すことはボラティリティ低減などのメリットもあるので、私は一般NISA口座で好んで米国ETFを買っています。
一般NISAは制度自体がツッコミどころ満載ですが、分配金については国内非課税なので二重課税の影響を受けない点は大きなメリットです。
まとめ
インデックス投資で米国ETFを使う場合、確定申告で外国税額控除するべきか、という問題を紹介しました。
外国税額控除は手間も掛かるので確定申告をすべきかどうかは投資家次第になりますが、インデックス投資の場合、一応の結論として以下のとおりです。
配当所得は結構難しい話ですが、インデックス投資の人も知っておいて損はないと思います。